コンバイン内部では,こぎ胴で脱粒された穀粒と,同時に発生する藁屑などの夾雑物が選別部へと搬送される.選別部は揺動選別部と風選別部に大別され,揺動選別部では脱穀された穀粒や藁屑に揺動振動を与えて,形状や比重の異なる夾雑物を移送選別し,チャフシーブを介して次行程である風選別部に移送する.選別精度の低下は,穀粒損失や夾雑物混入の増加を招き,収量の低下はもちろん,その後の調製作業にも悪影響を与えます.
選別性能の向上には,過去の経験や蓄積した技術に基づく設計・試作と,様々な品種に対する実証実験の繰り返しを行うため,多くの時間と多額の開発費用が必要となります.そのため選別性能の向上と開発期間短縮,開発コスト削減には,選別状況を再現する穀粒と藁屑のモデリングと,それらを用いた選別システムのシミュレーションが有用です.
本研究では,自脱コンバインの揺動選別部を供試し,混合物総質量,籾・藁屑混合比,籾・藁屑の湿り状態,揺動駆動軸回転数,チャフシーブの開度の5 つの制御因子について,設定条件を変化させて,籾のチャフシーブ間での流下量を実験的に求め,それら制御因子の変化が選別性能に与える影響を明らかにしています.
また,供試機の揺動選別部の構造を3D モデルとして構築し,実験を行った制御因子に基づく条件において、籾と藁屑の3D-DEM(個別要素法) による選別シミュレーションを実施し,実機による実験結果と比較検討しています.